葬儀の際には、お車代の他にも「御礼(おれい)」や「心付け(こころづけ)」といった形で金銭をお渡しする習慣があります。これらはすべて感謝の気持ちを表すものですが、そのニュアンスや対象となる相手が少しずつ異なります。これらの違いを理解しておくことで、より適切な形で感謝を伝えることができます。まず「お車代」は、その名の通り、遠方から来てくださった方や、特定の役割のために足を運んでくださった方への交通費としての意味合いが最も強いものです。僧侶や遠方の親族、弔辞を読んでくださった主賓などが主な対象です。交通費の実費負担を補うという意味合いに加え、わざわざお越しいただいたことへの感謝の気持ちが込められています。次に「御礼」ですが、これは交通費というよりも、葬儀の運営において何か具体的な労力を提供してくれたことに対して、謝意を示すために渡すものです。例えば、受付や会計、駐車場係などを引き受けてくれた友人や会社関係者、ご近所の方などが対象となります。彼らの働きがなければ葬儀は円滑に進みません。その労働への感謝としてお渡しするのが「御礼」です。表書きもそのまま「御礼」と書きます。最後に「心付け」です。これは、いわゆるチップに近いニュアンスを持つもので、お世話になったスタッフへの感謝の気持ちとして渡します。葬儀社や斎場のスタッフ、火葬場の係員、マイクロバスの運転手などが対象となります。彼らは仕事として業務を行っていますが、その中で特に親身に対応してくれたり、細やかな配慮をしてくれたりした場合に、個人的な感謝としてお渡しするものです。ただし、最近では公営の斎場や火葬場、また多くの葬儀社では「心付け」を固く辞退する規定になっていることがほとんどです。そのため、無理に渡そうとするのは避けるべきです。もし渡す場合は、目立たないように、ポチ袋などに入れてそっと手渡すのが慣例です。このように、同じ感謝の気持ちを表す金銭でも、「お車代」は足労への感謝、「御礼」は労働への感謝、「心付け」はサービスへの感謝、とそれぞれ焦点が異なります。誰に、どのような理由で感謝を伝えたいのかを考えることで、どの名目で金銭を用意すれば良いかが自ずと決まってくるでしょう。
お車代と御礼そして心付けの違い