なぜ葬儀でドライアイスは不可欠なのか
葬儀の見積もりに記載された「ドライアイス費用」を見て、その必要性に疑問を感じる方もいるかもしれません。しかし、ドライアイスは、科学的根拠に基づいた極めて重要な役割を担っています。人が亡くなると、自己融解や体内常在菌の活動によって、残念ながらお体の変化が始まります。この変化を緩やかにし、穏やかなお顔を保つためにドライアイスは不可欠なのです。ドライアイスは、二酸化炭炭素を固体にしたもので、その温度は約マイナス79℃という超低温です。このドライアイスをご遺体の周りに置くことで、強力な冷却効果を発揮し、腐敗の進行を大幅に遅らせます。また、液体にならず直接気体になる「昇華」という性質を持つため、氷のように溶けてご遺体や布団を濡らす心配がありません。ご遺体の長期保全や修復を目的とするエンバーミングを行わない場合、ドライアイスによる冷却処置は、故人の尊厳を守るための最も重要で標準的な処置となります。葬儀社の専門スタッフは、解剖学的な知識に基づき、変化が進みやすい内臓が集まる腹部などを中心に適切な処置を施すことで、お体の変化を最小限に抑えます。これにより、ご遺族は闘病の苦しみから解放された安らかなお姿に安心して触れることができ、温かい思い出と共に心穏やかにお別れの時間を過ごすことが可能になるのです。これは、辛い最後の記憶を、穏やかな記憶へと上書きする「グリーフケア」の観点からも非常に重要です。また、ご遺体を低温に保つことは、感染症のリスクを低減させるという公衆衛生上の側面も持っています。ドライアイス処置は、故人のためだけでなく、遺された家族や社会を守るためにも不可欠なプロセスなのです。